PR

ニュース コラム

【産経抄】4月29日

Messenger

 英語の「EVIL=悪」を逆さまにすると「LIVE=生きる」になる。ある物語に出てきた「EVIL-LIVE」のシンプルな回文に、英文学者の柳瀬尚紀さんが奥深い訳を残している。「EVIL」は「咎(とが)」、「LIVE」は「各人」と(『日本語は天才である』新潮社)。

 ▼「咎」の字を切り分けて「各人」。なぜなら、人は生まれながらにして天から罪を背負わされ、それぞれの人生を生きている-。なるほど日々の営みの裏で、知らず知らずのうちに罪を重ねていることはあるだろう。「悪」と「生きる」は、紙の裏表かもしれない。

 ▼体制維持のためなら、なりふり構わぬということらしい。自国での独裁や近隣への脅しなどなかったかのごとく南北会談で振る舞った金正恩朝鮮労働党委員長の善人ぶりである。頬が溶け落ちそうな「笑み」は、あるいは自らの窮状を悟られまいとする「見栄(みえ)」か。

 ▼過去2代の指導者が越えることのなかった軍事境界線を、大きな体で軽々と踏み越えたのには驚いた。両首脳の出した宣言で共通の目標とした「完全な非核化」はしかし、具体的な手順に何も触れていない。非核化の意味するところも国際社会と北で大きく異なる。

 ▼北の核放棄を求める米国と、在韓米軍を朝鮮半島から追い払いたい北の思惑とは相いれない。核・ミサイルによる挑発や拉致という北の「咎」に日本をはじめ「各人」が手を携えて臨む。予定される米朝会談などで妥協のない圧力を加え、北に答えを迫るほかない。

 ▼回文作家の福田尚代さんに一句がある。〈生きている古い敵意〉(『ひかり埃(ほこり)のきみ』所収)。白い歯の奥にしまわれた本音の見極めを怠るまい。世界は過去の背信を忘れていない。握手が「悪手」になることも。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ