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【国語逍遥】(96)清湖口敏 あっ、点がない! 「取り返せばいい」に感激

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【国語逍遥】
(96)清湖口敏 あっ、点がない! 「取り返せばいい」に感激

入場行進で慶応義塾ナインの先頭を行くプラカード=3月23日、甲子園球場(甘利慈撮影) 入場行進で慶応義塾ナインの先頭を行くプラカード=3月23日、甲子園球場(甘利慈撮影)

 菅直人さんは首相在任中の平成22年、民主党(当時)の代表選における公開討論会に先立って「初心を貫く」と揮毫(きごう)した。弊社の政治部がにわかにざわついたのは、その日の夜も更け、日付がかわった頃である。編集局では朝刊最終版の制作に着手していた。

 「字が変だ!」。撮影された揮毫をよくよく見てみると、「初」の字が本来の衣偏ではなく示偏(ネ)になっている。つまり点が1つ欠けていたのである。

 菅さんの揮毫を報じた全国紙で、字の誤りに触れたのは産経だけだった。後に「なあに、弘法にも筆の誤りさ」と菅さんが開き直った-かどうかは知らない。

 弘法にも、といえば、このことわざの由来ともいわれる伝説に触れないわけにはいかない。弘法大師(空海)が京の都の應天門(おうてんもん)の額を書いた際、應(応の旧字体)の最初の点が抜け落ちているのに気づいた。だが額は既に門に掲げられている。そこで弘法大師は額をめがけて筆を投げつけ、見事、所定の位置に点を付け加えた。今昔物語に紹介された話である。

 弘法大師でさえ間違ってしまう應(応)の字である。聖人君子でもない身が誤ったところで特段の不思議もないのではあるが、それでも次の間違いは、さすがに関係者の肝胆を寒からしめたのに違いない。

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