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【正論】「文化」戦略は国際政治を変える 

大阪大学名誉教授・猪木武徳氏
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 尊敬するイタリア人ピアニストが京都に来た折、ヨーロッパの音楽の業界事情や文化政策について話を聞く機会があった。

 彼はさまざまな国で演奏活動をしてきた経験から、自国イタリアをはじめヨーロッパのほとんどの国のクラシック音楽への公的支援はますます貧弱になり、聴衆(特に若者)動員数の低下に悲観的にならざるをえないという。わずかに望みを持てるのが、日本とドイツの芸術振興への公的資金の投入だと言われ、その意外さにいささか面はゆい気持ちがした。

≪芸術が生き延びる意味とは何か≫

 この指摘がどれほどの客観的観察に裏付けられているのかにわかには判断できない。公的支出の現状や聴衆の数などの数字を比較することも必要だろう。しかしその発言には、演奏活動をする現場の人の実感がこもっており、音楽芸術の将来を考えるために参考になるところが多かった。

 芸術を国家がいかに庇護(ひご)するのか、若い世代が古典芸術に関心を持つにはどのような政策を打ち出せばよいのか、という古くて新しい問題に簡単な答えがあるわけではない。生き延びるものは生き延びる。国家が芸術の価値を定義し、それを国民に押し付け、特定の分野だけに資金投入を行うことは、国民にとってもその芸術にとっても必ずしも幸いなことではなかろう。そこには、キリスト教が国教となり国家の保護を受けることによってそのエネルギーを失っていった歴史と似た問題があるからだ。

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