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【正論】思い出を育てて生きる大切さ 哲学者・京都大学名誉教授・加藤尚武

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 人間は、自然の威力の隙間をかいくぐって、安全な場所、人間の生きる場所をかろうじて確保しているに過ぎない。「人間は地球の上に生えたカビのようなものだ」という言葉を残した人もいる。自然にとっては、人間が存在するかしないかは、どちらでもいい。

 自然そのものの、何の感情をも含まない力が、平和な家庭生活からかけがえのない一員を取り去っていったという、あまりにも単純な悲劇性に対処する仕方は、ひたすらに亡き人の思い出に向かって語りかけ続けることしかない。いくら嘆いても、自然は失った人を返してはくれない。

 思い出は悲しみを蘇らせる。思い出は、しかし、同時にその悲しみを和らげる。思い出を育てながら生き続ける人々が、静かな深いやすらぎの画像にたどり着くことを祈らずにはいられない。(哲学者・京都大学名誉教授・加藤尚武 かとうひさたけ)

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