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【正論】思い出を育てて生きる大切さ 哲学者・京都大学名誉教授・加藤尚武

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 世界にはさまざまな悲しい記録がある。『アンネの日記』はナチスの迫害を逃れようとした少女のこころの記録である。どんなことでもまっすぐに受け止めようとするアンネの心情の素直さが、結局、収容所の中で死んだというアンネの出来事の悲しさを深める。

 ヒロシマ・ナガサキの思い出を書いた書物を読めば、人間否定の生々しい空恐ろしさが伝わって、この世にあってはならないことが、この世に確かに存在したということの不条理が伝わってくる。

 アウシュヴィッツもヒロシマ・ナガサキも、不条理の根源は人間による人間の否定である。その根底には、武力によって人間を殺すことを当然と思い込む過ちがある。力をもつ者は力のない者を支配することができるという思い上がりがある。津波とは違う。

≪単純な悲劇性にどう対処するか≫

 津波は、どうしてあれほど大きな力を自然が隠してもっていたのか分からないほどの巨大な力を、自然に背いたこともない、罪もない人々の上に押し付ける。津波は、人間が文明を作って思いあがっていることへの処罰なのだと思いたがる人もいるが、実際には何の価値観も、憎悪の感情も、処罰の意志もない、ただまったく純粋に物理的な力であるにすぎない。

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