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【国語逍遥】(94)清湖口敏 広辞苑 国民的な「国語辞典」たれ

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【国語逍遥】
(94)清湖口敏 広辞苑 国民的な「国語辞典」たれ

岩波書店の辞書「広辞苑」第七版 岩波書店の辞書「広辞苑」第七版

 広辞苑(初版)を編纂(へんさん)した新村出は、自身のことを「語史にのみ傾倒せる編者」と自序に記した。彼は2版の刊行を見ることなく逝ったが、語源や語誌を重視する広辞苑の編集方針はその後も継承されているのであろう、語源説明や出典表示が実に行き届いている。古典の用例が豊富なのもうれしい限りだ。

 古い語義から順に掲げるのも広辞苑の特色で、意味の変遷がよく分かる。冒頭で「国語辞典の広辞苑が大好きだ」と書いた私の真意も、まさしくそこにある。

 例えば「やさしい」を引くと、最初に「身も痩せるように感じる。恥ずかしい」の原義を示し、万葉集から用例を拾っている。私たちが一般に思い浮かべる意味はといえば、7版では5番目に「情深い。情(じょう)がこまやかである」として出てくる。実は5、6版では「情深い…」が6番目に置かれ、5番目には「悪い影響を及ぼさない」の義とともに「肌にやさしい洗剤」の用例が載っていた。

 「肌にやさしい」といった比較的新しい用法がどうして5番目なのかと不思議でならなかったが、7版では末尾の8番目に後退している。遅ればせの感は否めないものの、丁寧な点検の跡がよくうかがえる。

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