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【正論】北朝鮮の恫喝に曝され、核の恫喝に屈すれば、日本は近代国家たり得ない 東洋学園大学教授・櫻田淳

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【正論】
北朝鮮の恫喝に曝され、核の恫喝に屈すれば、日本は近代国家たり得ない 東洋学園大学教授・櫻田淳

櫻田淳・東洋学園大学教授 櫻田淳・東洋学園大学教授

 ≪「対話」求める声が沸騰するのか≫

 そして、「北朝鮮から核の脅迫を受けながら生きる事態を甘受できない」のは、米国だけではなく日本にとっても同じはずである。北朝鮮は、彼らが米国の「追従勢力」の筆頭と見ているらしい日本に対しては「日本列島四島を核爆弾で海に沈めなければならない」と既に威嚇している。

 また、北朝鮮が核・ミサイル開発成就の暁には、その「核の恫喝」を米国に対してではなく、まず日本に対して向けるであろうというのは、平凡な予測にすぎない。具体的には、北朝鮮が「核の恫喝」を背景にして戦時賠償の名目で10兆円を序の口として日本に要求するような挙に走ったとしても、それ自体は驚くに値しない。

 それにもかかわらず、「平和主義」感情が横溢(おういつ)した日本では、「北朝鮮から核の脅迫を受けたとしても、生きていられればいい」と反応する空気は残るのであろう。こうした空気の上で事態がいよいよ切迫すれば、「とにかく対話を」とか「対話を切り出さない首相が悪い」とかという声が沸騰するであろうというのも、平凡な予測である。

 ≪恫喝に屈すれば国家の資格喪失≫

 しかし、そうした声が勝り、日本が「核の恫喝」に屈してしまえば、その時点で日本は「近代の価値」を奉じる国家としての資格を喪失することになる。それは、日本が「自らの『自由』の価値のためにすら闘わなかった」ことを意味するからである。

 二十余年前、高坂正堯教授(国際政治学者)は、遺稿の中で「安全保障政策の目的は、その国をその国たらしめている価値を守ることにある」と書いた。高坂教授の認識を踏まえるならば「日本を日本たらしめている価値」とは、近代以前の永き歳月の中で培われた「八百萬(やおよろず)の神々」の価値意識と、近代以降に受容した「自由・民主主義・人権・法の支配」の価値意識の複合であるといえる。「朝鮮半島の核」は、そうした価値意識に彩られた社会を次の世代に残せるかということを、当代の日本の人々に問うているのである。

 この度の解散・総選挙には、朝鮮半島情勢が一瞬にせよ「凪(なぎ)」に入ったという安倍晋三首相の判断が反映されていよう。

 しかしながら選挙後、朝鮮半島情勢の「嵐」が本格的に訪れる局面を見越すならば、「日本を日本たらしめている価値」の確認は大事になる。それは、日本の人々にとっては、来る「嵐」を前にして自らを見失わないための「縁(よすが)」になるであろう。(東洋学園大学教授 櫻田淳 さくらだ じゅん)

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