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【国語逍遥(89)】河内音頭 全国各地にも「殴り込み」を 清湖口敏

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【国語逍遥(89)】
河内音頭 全国各地にも「殴り込み」を 清湖口敏

会場いっぱいに広がる踊りの輪。錦糸町の夜が熱気に包まれた=8月31日、東京都墨田区(イヤコラセ東京 木島ヒロミツさん撮影) 会場いっぱいに広がる踊りの輪。錦糸町の夜が熱気に包まれた=8月31日、東京都墨田区(イヤコラセ東京 木島ヒロミツさん撮影)

 「物語を節づけして語る形式には、どこか人をいてもたってもいられなくさせる力が本来あると思うんですよ。そうした語りもののパワーが、リズムを呼び込み、あるいはあの踊りを引き出した」(同)

 まだ文字をもたない時代では、言葉は今よりはるかに音とリズムに満ちていたはずだ。神話の口承でも、言葉の音とリズムが記憶を大いに助けただろうし、平家物語が魂のひだまで染み入るような詞章で紡がれたのも、琵琶法師らによって節付けされ、語られてきたからに違いない。

 文字文化の発達がもたらした恩恵は計り知れないが、一方で声と語りの文化は痩せていった。昭和7年の全国調査によれば、ラジオ聴取者の好む番組の第1位が浪曲で57%を占めた。以下、講談、落語、人情話、義太夫、民謡と続く(『岩波講座 日本文学史』第16巻)。時代が時代だったとはいえ、浪曲をはじめとする語り芸は国民にとってなくてはならない娯楽だった。

 「言葉には『話し言葉』と『書き言葉』の区別があるが、私はこれにもうひとつ『語り言葉』を割り込ませてみたらどうかと考える」(『走れ国定忠治』)。けだし至言である。

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