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【日の蔭りの中で】今も昔も変わらぬ「死」 源信が描いた地獄はあの世のものではなく… 京都大学名誉教授・佐伯啓思

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【日の蔭りの中で】
今も昔も変わらぬ「死」 源信が描いた地獄はあの世のものではなく… 京都大学名誉教授・佐伯啓思

佐伯啓思・京都大名誉教授(彦野公太朗撮影) 佐伯啓思・京都大名誉教授(彦野公太朗撮影)

 今年の夏は暑かった。その最中に奈良の国立博物館で開催されている源信展を見に行った。今年でちょうど千年忌だそうである。浄土教の基礎を作り、『往生要集』の著者として知られる源信ではあるが、それほどファンがいるとも思えない。が、この暑い中、多くの人が詰めかけていた。中国人の観光客らしき人も多数きている。

 ただの一時的な仏教ブームなのか、もう少し深い意味があるのか、よく分からない。しかし、『往生要集』の著者にこれほど関心が集まるのもまた、人々がどこかで「死」もしくは「死に方」を気にかけているからかもしれない。

 インド仏教には地獄というものはあるが、それと対比した極楽という観念はなかったようで、わが国で地獄と極楽が対比されるようになったのは、源信のおかげだとされる。彼はこの穢(けが)れた末法の世ではただただ念仏によってのみ人は救われる、という。念仏によって、この汚れた世を離れ、浄土を求めるという厭離穢土(おんりえど)、欣求浄土(ごんぐじょうど)を説いた。そして、その汚れた迷いの領域の代表が地獄であった。

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