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【東京特派員】「神の鳥」への償い 湯浅博

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【東京特派員】
「神の鳥」への償い 湯浅博

 北アルプス山行では、雷鳥と並んで岩ツバメにもよく驚かされた。出会いは大学時代に登攀(とうはん)した滝谷であった。涸沢カールから見ると、北穂高岳の反対側に回り込んだ先の岩壁が岩登りの「聖地」だった。

 垂直に近い岩壁にわずかなホールドをつかんで慎重に体をずらすと、突然、ザイル仲間が「ラクッ(落)!」と叫んだ。落石に特有の「ヒュー」という音に体を緊張させる。落下してくる黒い石もどきが、頭上でUターンすると急上昇していく。下でザイルを操っていた先輩が「岩ツバメのやろう」と苦々しげに毒づいていた。

 あれは、巣や縄張りに近づいてきた闖入(ちんにゅう)者を威嚇していたのだろう。雷鳥も岩ツバメも、過酷な自然界で「種の保存」のために闘っている。人間による雷鳥の人工繁殖はせめてもの償いなのだ。(ゆあさ ひろし)

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