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【東京特派員】「神の鳥」への償い 湯浅博

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【東京特派員】
「神の鳥」への償い 湯浅博

 初めて雷鳥を見たのは、高校山岳部1年目の夏合宿だった。薬師岳から入って黒部五郎岳、三俣蓮華岳、さらに双六岳を経て槍ケ岳に至るルート上で何度か目撃している。短い足を懸命に動かす様は、どこか、ペンギン・ウオークに似て愛くるしい。

 夏合宿は1週間にわたる縦走なので、45キロほどあるザックのベルトが肩に食い込む。ひたすら苦痛に耐えて登るから、とても彼らを観察する余裕などはない。ザックを下ろす休憩時に、人を恐れずに近づく雷鳥に癒やされた。

 その習性が、彼らの命取りになる。飛来する猛禽(もうきん)類は以前からの天敵だったし、温暖化で高山地帯に進出してきたシカやキツネに捕食され、ニホンザルまでが幼鳥を狙うことが近年、確認されている。

 しかも、山小屋から排出されるゴミに混じる病原菌が彼らを侵し、逃げ込むはずのハイマツが登山者に踏み荒らされる。ハイマツは彼らの生命線だから、まさに生存権が脅かされているのだ。

 そんな窮状を見かねた環境省が、一昨年から乗鞍岳で22個の卵を採集し、東京の上野動物園、長野の大町山岳博物館、さらに富山市ファミリーパークの3施設で孵化(ふか)を試みた。3園で22羽が孵化したが、半数近くが死んだ。命をつないだ幼鳥は、3園のほかに栃木の那須どうぶつ王国でも飼育されている。

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