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【正論】長寿社会が変える「生」の意味 新たな「苦難」とのであい 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

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【正論】
長寿社会が変える「生」の意味 新たな「苦難」とのであい 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

社会学者で関西大学東京センター長の竹内洋氏(栗橋隆悦撮影) 社会学者で関西大学東京センター長の竹内洋氏(栗橋隆悦撮影)

 だからわれわれがこのアンケート回答氏のように今から100年後の平均寿命を予測するとしたら、単に寿命年数を今よりも長く答えるだけでは収まらないだろう。死の消滅さえ考えられる時代になったからだ。

 死が消滅する時代といえば、今から100年以上も前に書かれた『吾輩は猫である』の中で夏目漱石がこんなことを言っている。

 漱石の分身である苦沙弥先生が、今から千年も万年もたったときとしてしゃべっている。その時代になると、すべての人間は不死身となり、死といえば自殺しかなくなるという。だから自殺についての研究が進んで立派な科学になる。倫理のかわりに自殺学が正規の科目となる。だから気の利いたものは自殺することになるが、どうしても自殺できない者もいる。

 「それで殺されたい人間は門口へ張札をして置くのだね。なにただ、殺されたい男ありとか女ありとか、はりつけて置けば巡査が都合のいい時に廻ってきて、すぐ志望通り取計ってくれるのさ」とされている。死の恐怖の時代の悪夢ではなく、死ねない時代の悪夢が語られているのである。

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