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【国語逍遥(85)】憲法前文の「に」は間違いなのか 助詞も中身も時代にそぐわず 清湖口敏

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【国語逍遥(85)】
憲法前文の「に」は間違いなのか 助詞も中身も時代にそぐわず 清湖口敏

日本国憲法の原本(一部)。「上諭」「副署」に続いて「前文」が記されている=国立公文書館所蔵 日本国憲法の原本(一部)。「上諭」「副署」に続いて「前文」が記されている=国立公文書館所蔵

 これら諸例に徴するならば「~に信頼する」は、憲法制定の頃までは文筆家らの間でごく普通に使われていた表現ではないかと思われる。そこでこれの正誤を問われた際には「一概に間違いとは言い切れない」と答えるのが最も賢明ということにはなるだろう。

 ただ、そのように答えたうえで考えねばならないのは、今を生きる私たちにとってその語法は慣用的に容認できるか否かである。例えば泉鏡花や森鴎外、坂口安吾らが「退治する」の意で「退治る」を使っているからといって、私たちが日常の会話や文章でこれを使うのには相当の違和感が伴うだろう。「頭のよい子供」を指して「切れる子供」と言ったりすると、たとえ本来の語義にかなってはいても、意思伝達に著しい齟齬(そご)をきたそう。

 かつて「~ヲ」と「~ニ」の両形が併存していた「信頼する」は、戦後しばらくの間に「~ヲ」が圧倒的優位に立ったと考えられる。逆に「~ニ」はすっかり古びた結果、現代日本人のほとんどが奇異な言い方と捉えるようになった。

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