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【西海岸から】成就した開拓者の志

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【西海岸から】
成就した開拓者の志

 米ロサンゼルスには日本の味と変わらないすし店がいくつもある。「スシバー」と呼ばれるカウンターに米国人が座り、日本酒の杯を傾けながら、にぎりたての新鮮なすしをほおばる。味をかみしめ、黙る。そして静かにうなる。おいしいすしを食べたときのしぐさは米国人も同じだ。

 すしが米国人の好物の上位に入っていることは今さらいうまでもない。「どこのスシバーがうまいのか」と米国人に聞かれることもしばしばで、そのたびにすし人気を実感する。

 「すしがポピュラー(人気)になったのはいいが、ベーシック(基本)を知ってほしい」。すしブームの仕掛け人として知られ、ロサンゼルスで日本食品の貿易会社を興した金井紀年さんの言葉だ。すしを握る技術はもちろん、心も伝えたかった。金井さんは現地で有名な日本人シェフと協力し、すし職人養成の専門学校を開設。生徒は欧州や南米、アジア諸国からやってきた。「和食を米国に広める」と家族を連れて渡米したのは53年前。日系社会だけでなく、米国市場を開拓するために奔走した。

 その開拓者は4月22日、94歳で他界し、「お別れの会」が7日、ロサンゼルス・ダウンタウンの西本願寺別院でしめやかに行われた。「和食は文化だから広めたかった」。志は成就し、後世に引き継がれる。(中村将)

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