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【ソロモンの頭巾】長辻象平 『桜奉行』 幕臣・川路聖謨の環境創生

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【ソロモンの頭巾】
長辻象平 『桜奉行』 幕臣・川路聖謨の環境創生

奈良市内を流れる佐保川沿いの桜並木。奈良奉行、川路聖謨の心が息づいている(資料写真) 奈良市内を流れる佐保川沿いの桜並木。奈良奉行、川路聖謨の心が息づいている(資料写真)

 花の季節まで紹介するのを待っていた。

 昨年11月末に出版された出久根達郎さんの時代小説『桜奉行-幕末奈良を再生した男・川路聖謨(としあきら)』だ。

 主人公の川路(1801~68)は、下級武士の家に生まれたが、卓抜した頭脳と人の心をつかむ力で昇進を重ね、佐渡奉行、奈良奉行、大坂町奉行などを歴任して幕末期の勘定奉行に就任した旗本である。

 本書は、5年間にわたる川路の奈良奉行時代を描いている。エコツーリズムの原型があり、幕末の気温も興味深い内容だ。

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 家族を伴った東海道の15日間の旅で、彼が奈良奉行所に着任したのは、弘化3(1846)年3月19日のことだった。現代の暦では4月14日。

 「いにしへの奈良の都の八重桜」の期待に反して古都の桜は貧弱だった。立ち枯れのまま放置されている桜の木も多かった。

 農民の生活は苦しく、人心もすさんで、寺も町も荒れていた。古都の経済は衰退していたのだった。

 川路は桜の花による社会の立て直しに着手した。興福寺や東大寺などとも相談して大量の桜と楓(かえで)を植樹した。半年がかりの事業だった。春の花と秋の紅葉は、奈良に遊山客を呼ぶことになる。江戸の観光立国プロジェクトだ。

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