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【正論】万能薬のように徘徊する「コミュ力」という妖怪 「近代型能力」あってこそ 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

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【正論】
万能薬のように徘徊する「コミュ力」という妖怪 「近代型能力」あってこそ 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋氏(栗橋隆悦撮影) 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋氏(栗橋隆悦撮影)

 「コミュ力」という言葉が飛び交っている。コミュ力が「高い」とか「低い」とかいわれる。コミュニケーション(意思疎通)能力のことである。「コミュ障」(他人との会話が苦痛で苦手)という言葉さえある。コミュ力を高めるための小学生対象のコミュニケーション塾や大人相手のコミュニケーション開発講座などもある。

≪「ポスト近代」のキーワードに≫

 「巧言令色鮮(すくな)し仁」や「沈黙は金、雄弁は銀」などの言葉を耳にし、「沈思黙考」をよしとした世代には時代の変わり様が大きい。

 そもそも以心伝心で成り立ってきた日本社会ではコミュニケーションに該当する日本語がなかった。だからマス・コミュニケーションのようにカタカナ使用だったが、日常用語としては今ほど使用されてこなかった。

 ところが近年は、コミュニケーションが「コミュ」と略され、さらに「コミュ力」が生きる術(すべ)の要のように使用されている。「現代日本に妖怪が徘徊(はいかい)している。コミュ力という妖怪が」とでもいいたいほどである。

 コミュ力が言われだしたのは、知識量や従順、勤勉などの「近代型能力」に対して、これからは創造性や能動性、交渉力などの「ポスト近代型能力」が必要だとされ出したあたりからである。たしかにコミュ力は、サービス労働が主流となり、物を相手にした肉体労働よりも人間を相手にした感情労働の時代になったことと関連している。また変化が激しい流動的社会において、すばやく対応する能力が必要ということにも関連しているだろう。

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