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【赤の広場で】映画監督はなぜロシアを去ったのか

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【赤の広場で】
映画監督はなぜロシアを去ったのか

 「日本の読者の方には理解できないかもしれない。ただ伝えたいのは、私が働きなれた欧州諸国ではなく、1991年までソ連だったラトビアに移住したということだ」

 スカイプを使った取材の相手はロシアの著名ドキュメンタリー映画監督、ビタリー・マンスキー氏(53)。日本では北朝鮮の内実を暴露した映画で知られるが、先頃ウクライナ紛争をめぐる最新作で、ロシアを離れラトビアに移住した事実を明らかにしていた。

 ウクライナ出身のマンスキー氏は、同国各地に点在する自身の親類の生活に密着取材し、紛争が彼らの日常をいかに破壊したかを庶民の視線で描き出していた。取材に対し、「侵略国」となったロシアにとどまることが受け入れ難かったと語った。

 なぜラトビアなのか。マンスキー氏は多くを語らなかったが、ロシアでは欧米に去る人々への風当たりが強く、“耳を貸さない”風潮もある。旧ソ連にとどまることで、自身の主張をロシアの人々の胸に響かせるための一線を守ったのではないかと強く感じた。

 ただ、ウクライナ紛争の映画はロシアでは当局の上映許可がおりず、モスクワでは映画祭に合わせて上映されただけだった。次作のテーマは「ロシア」という。快作を期待したい。(黒川信雄)

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