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【産経抄】医は仁術か算術か 1月18日

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【産経抄】
医は仁術か算術か 1月18日

 近代医師制度の下で、日本の女医第1号となったのは荻野吟子である。明治18年に東京・本郷で開業している。医師をめざしたきっかけは、夫からうつされた性病だった。

 ▼男性医師による診察は、当時の女性にとって耐え難い屈辱であり、心に深い傷を残した。同じような苦しみを他の女性患者に味わってほしくない。夫と離婚した吟子は、その一心で障害をはねのけ勉学に励んだ。

 ▼いや、男性だって、性病で医師の診察を受ける際は気後れするものだろう。その患者の心理に付け込んだ悪質な犯行といえる。警視庁は昨日、東京・新宿のクリニックの院長、林道也容疑者(69)を詐欺容疑で逮捕した。

 ▼容疑は、60代の男性会社役員に性病だと虚偽の診断を下して、薬代名目で現金をだまし取ったというものだ。会社役員は、治療を続けても検査の数値が改善しなかった。不審に思い別の病院を受診したところ、病気ではなかったことがわかったという。同じように、虚偽の診断を受けて必要のない薬を飲み続けた患者は、かなりの数に上りそうだ。

 ▼吟子は後に北海道に渡って、現在のせたな町で開業する。十数年間の地域医療への貢献を顕彰して、銅像も建てられた。吟子が好んだ聖書の一節も刻まれている。「人 其の友の為に己の命を損なう 之より大いなる愛はなし」。

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