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【産経抄】懐かしさに頼らないと生きてゆけない 12月20日

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【産経抄】
懐かしさに頼らないと生きてゆけない 12月20日

 米フィラデルフィアにある大学の構内で、女子大生の絞殺死体が見つかった。衣服は身につけていたが、スニーカーとソックスが奪われていた。

 ▼7年間も未解決だった事件について、警察から助言を求められたのが、「ヴィドック・ソサエティ(VS)」である。迷宮入りの殺人事件を捜査する民間団体は、パリで世界初の私立探偵事務所を開設した人物にちなんで名付けられた。

 ▼元FBI捜査官や心理学者などで構成されたメンバーは、犯人の女性の靴に対する異常なまでの執着に着目する。大学の警備員が以前、靴にまつわるトラブルを起こしていた。事件は解決する(『未解決事件(コールド・ケース)』マイケル・カプーゾ著)。

 ▼日本にはVSのような団体は存在しない。ただ近年、警察は未解決事件の捜査に力を入れている。広島県の山中で19歳の女子大生が遺体で見つかった事件も、その一つだった。発生から7年たって急展開を見せている。

 ▼今年に入って捜査で浮上した男のデジタルカメラから、行方不明になった後の女子大生の画像が見つかった。男は遺体発見の2日後に自動車事故を起こし、同乗の母親とともに死亡している。もはや、犯行の動機も謝罪の言葉も聞くことはかなわない。犯人は、女子大生の輝かしい未来を奪っただけではない。「法の裁きを受けさせたい」。遺族にとっての、最後の願いさえも踏みにじった。

 ▼未解決といえば、東京都世田谷区で平成12年、会社員の宮沢みきおさん一家が殺害されてから、16年が経過しようとしている。捜査を続ける警視庁は、改めて情報提供を求めている。「懐かしさに頼らないと、生きてゆけない」。宮沢さんの両親の悲痛な言葉が、何年たっても耳から離れない。

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