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【石原慎太郎 日本よ】三島由紀夫氏と一致した「自己犠牲の美徳」をあの男に見た

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【石原慎太郎 日本よ】
三島由紀夫氏と一致した「自己犠牲の美徳」をあの男に見た

三島由紀夫 三島由紀夫

 敬愛していた今は亡き三島由紀夫氏とは何度か火花の散るような対談をしたことがある。しかし最後の、氏があの市ケ谷台で割腹自決するわずか前に行った最後の対談は二人にとっても極めて重要かつ印象的なものだった。

 対談の主題は『男は何のためになら死ねるか』なるもので、副題は『男の最高の美徳とは何か』と言うことだった。話を始める前に三島さんが「それを口にする前にお互いに入れ札しよう」と言いだし、ならばと二人して手元の紙に書き記して差し出して開いてみたら二人とも同じ『自己犠牲』だった。

 それを見せ合って三島さんは莞爾(かんじ)として頷(うなず)きその後次の間で持参していた真剣を抜いて習いたての居合いを披瀝(ひれき)してくれたものだった。

 その後間もなく彼が『楯の会』の仲間をかたらって自衛隊の根拠地市ケ谷台に乱入し隊員たちに決起を促し割腹自決した所以(ゆえん)が、私と最後の対談で彼が披瀝した男にとっての最高の美徳『自己犠牲』といかに繋(つな)がるかは私には未(いま)だに不明のままだが。

 しかし男女を問わずに人間にとっての最高の美徳とは己の生命やそれに近い代償を厭(いと)わずに払っての献身に他なるまい。それはこの現代においては希有(けう)なる行為に他ならない。他人の不幸を喜びあげつらい、ことを捏造(ねつぞう)までして他人を陥れ営利をむさぼる現代の日本の下司(げす)なメディアの堕落が象徴する現代社会にあって、人間にとっての最高の美徳の表示を求めるのは砂浜に落とした針を探すに等しいことかもしれない。

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