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【産経抄】知らない人に挨拶されたら、「逃げる」のが正しいか? 12月4日

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【産経抄】
知らない人に挨拶されたら、「逃げる」のが正しいか? 12月4日

 ある旅客機に年配の女性が乗ってきた。窓側の席に着いたその人は、箱を膝に乗せている。

 ▼聞けば、長年連れ添った夫の遺骨という。「ご主人さまには、隣のお席に座っていただき…シートベルトを締めて差し上げてください」。客室乗務員(CA)の言葉に、女性の口元がほころんだ。隣は空席だった。元日本航空CAの江上いずみさんが、近著『“心づかい”の極意』(ディスカヴァー)につづった実話である。

 ▼応変の接客術を、江上さんは「心づかいの引き出し」と呼ぶ。危険ですので、お荷物は棚に-と四角四面に応じても、機上の花は咲かなかったろう。場面に応じて引き出しを使い分けるのが「おもてなし」の肝という。この場合はどうか。「敷地内での挨拶を禁ず」。神戸市内のマンションで打ち出された取り決めが、地元紙への投書を機に波紋を呼んでいる。

 ▼「知らない人に挨拶されたら、逃げるように教えているので」。小学生の保護者が防犯策の一環として提案したらしい。林立するマンションの中で、各家庭が孤絶している。「挨拶しなさい」ではなく「逃げなさい」は、時代を冷ややかに映していよう。おのが住まいと隣近所を隔てる壁は高くて分厚いようだが、大人たちが沈黙で応じるのは考えものである。

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