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【産経抄】
統治能力のない政党が政権を握ればどれほどの混乱が生じるか、菅直人元首相は教訓を残してくれたが今の韓国は… 12月1日
作家の柴田錬三郎の筆は、時代小説の第1章を書き終えたところで止まってしまった。「私(作者)の頭脳は、完全にカラッポになってしまったのです」。仕方なく、書けない言い訳、お詫(わ)びの言葉を並べ始める。これが見事な読み物になっているのは、さすがだった。締め切りにまつわる古今の作家の文章を集めた『〆切本』(左右社)に収められている。
▼韓国の朴槿恵大統領もまた国民に向けて、自らの締め切り、つまり辞任について談話を発表した。友人の国政介入事件については謝罪した。もっとも、「個人的利益は得ていない」と言い訳も忘れない。すぐ辞めるわけでもないらしい。
▼「国会の決定に委ねる」との条件付きだった。大統領の任期を短縮するためには憲法改正が必要となる。辞意の表明を装いながら、時間稼ぎを狙っているのでは、との見方も出ている。
▼往生際の悪さでは、菅直人元首相も負けていない。東日本大震災への対応のまずさを断罪されて、退陣表明に追い込まれながら、その後3カ月間も首相の座に居座った。『〆切本』の編者は、「どの書き手も最終的にはすばらしい仕事を完成させた」と述べている。朴氏と菅氏は、「すばらしい仕事」の評価に値しない点でも共通している。