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【正論】中国とイスラムの暴力での文明争奪戦が始まった 日本は「近代」を蹂躙する勢力と戦え 評論家・西尾幹二

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【正論】
中国とイスラムの暴力での文明争奪戦が始まった 日本は「近代」を蹂躙する勢力と戦え 評論家・西尾幹二

評論家・西尾幹二氏 評論家・西尾幹二氏

政治的にも対中交流を謝絶していた。伊藤仁斎も荻生徂徠も反朱子学で、本居宣長の国学や水戸学への道を開いた。つまり、中国研究であった儒学が、日本は中国とは別の国であるとの意識をかえって高めた。中国の儒学に国境の観念はないが、江戸の儒学は日本人に国境の観念を与えた。日本もかくて「近代」の戸口に立った。

 日本は明治維新で初めて「近代」を獲得したのではない。それ以前に日本史の内部に「近代」は胚胎し、醸成されていた。明治の日本人があまり抵抗なしにヨーロッパを受け入れたのは発展段階が似ていたからで、世界では例外である。その代わりに明治日本は維新の直前まで地上に覇を唱えていたイスラム世界の全体像を視野に入れることを怠った。ギリシア・ローマをヨーロッパ史の祖先と見なすキリスト教文明の閉ざされた歴史プロパガンダを受け入れた。

 一方、ヨーロッパの方でも長い間、江戸時代の日本は封印された暗闇で、古代像を中華の歴史から奪い取り、日本の古代を蘇生(そせい)させた国学者たちなどの精神のドラマが「近代」を生んだのだという事情に気がつかなかった(今も気がついていない)。最近でこそノーベル賞の科学部門が欧米と日本に集中することに暗示を感じている人がいるが、数世紀に及ぶ歴史背景があってのことなのである。

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