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【正論】森林太郎はいかなる科学実験者だったのか 「鴎外」像を一新する西澤論文 東京大学名誉教授・平川祐弘

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【正論】
森林太郎はいかなる科学実験者だったのか 「鴎外」像を一新する西澤論文 東京大学名誉教授・平川祐弘

 国文出身の鴎外研究者にはやや独断的な鴎外崇拝者が多い。だが「鴎外は日本の大作家である。よって国文科出の者が扱うべきだ」と決めてかかるのはよくない。

 東西の学芸に通じた鴎外の全貌は一国文学の枠内では捕捉できない。小堀桂一郎『森鴎外』(ミネルヴァ書房)が研究必携書であるのは、小堀がドイツ留学体験者で、鴎外文庫のドイツ語書物を精読し翻訳を調査したからだ。それと同じことで、鴎外の実験の実態を評価するには医学者・西澤の論文を待たねばならなかった。

≪脚気問題は森の責任だったのか≫

 鴎外は「地位と境遇とが自分を為事場(しごとば)から撥(は)ね出した」と言ったが「自然科学よ、さらば」(『妄想』)でも、まあよかった人だったのではあるまいか。鴎外が丹念に綴(つづ)った史伝の伊澤蘭軒や澀江抽齋は医者である一方で儒者であった。彼らを理想とした鴎外は軍医の官僚である一方で文学者であった。医学の道一筋の北里らとは別の生き方をした。

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