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【産経抄】ドーピング国家にへっぴり腰 7月26日

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【産経抄】
ドーピング国家にへっぴり腰 7月26日

 ロシア帝政末期に権勢を振るった怪僧ラスプーチンの暗殺には、青酸カリ入りのお菓子が使われた。もっとも、政敵を抹殺する手段として毒殺の研究が進むのは、帝政が倒れてソ連時代に入ってからだ。

 ▼権力を手に入れたレーニンは、極秘の毒物研究所を1921年に設立している。その使命は、「ソ連政府の敵と戦うこと」だった。皮肉なことに、最初の犠牲者の一人となったのはレーニン本人である。スターリンが黒幕だった可能性が高い(『毒殺 暗殺国家ロシアの真実』アルカディ・ワクスベルク著)。

 ▼毒殺研究は、現在のプーチン政権にも引き継がれている。2006年にはロンドンで、英国に亡命中のロシアの元情報将校が、放射性物質ポロニウム入りの茶を飲まされて死亡した。犯行は恐らく、プーチン大統領の承認を得ている。英当局は今年1月、こんな内容の調査結果を発表した。

 ▼今回のロシアのドーピング問題も、構図は同じである。世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームは、国ぐるみの不正だと断定していた。にもかかわらず、国際オリンピック委員会(IOC)は、リオデジャネイロ五輪からの、ロシア選手団の全面除外の処分を見送った。

 ▼ロシア選手の出場の可否は、各国際競技連盟の判断にゆだねる、つまり丸投げしてしまった。五輪開幕まですでに2週間を切っている。必要な追加検査は、間に合うのか。ロシアの影響力が強い競技と、そうでない競技の間で、不公平が生じるかもしれない。いずれにしても混乱は必至である。

 ▼何よりIOCがへっぴり腰を見せたことで、「ドーピング国家」が大国ならば、無理が通る前例を作ってしまった。オリンピックの将来に、大きな禍根を残したといえる。

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