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【産経抄】子供がスマホ歩きせぬよう二宮金次郎像が座ってしまうとは… 6月27日

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【産経抄】
子供がスマホ歩きせぬよう二宮金次郎像が座ってしまうとは… 6月27日

 薪(まき)を背負って歩きながら、本を読む。江戸時代の農政家、二宮金次郎といえばまず、銅像のこの姿が思い浮かぶ。平成15年、関西の私鉄や地下鉄に張り出されたポスターでは、金次郎少年が電車の座席に座っていた。背中の薪を膝の上に載せ静かに読書する絵柄が訴えていたのは、車内のマナー向上である。

 ▼今年3月、栃木県日光市の小学校には、金次郎の座像が実際に建てられた。薪を背負った金次郎が、切り株に座って本を読んでいる。歩いて本を読むのは危険である。スマートフォンを操作しながらの歩行を肯定しかねない。地元紙の下野新聞によると、こんな市民の声も反映されたらしい。

 ▼「歩きスマホ」に対する世間の目は、かように厳しい。鉄道会社や携帯電話会社、自治体では、啓発活動に力を入れている。それでも、通勤、通学路や駅の構内でのトラブルは、一向に減る気配がない。

 ▼25日午後、神奈川県藤沢市の私鉄駅のホームで、高校3年生の女子生徒が電車に接触して頭を打つ軽傷を負った。防犯カメラの映像などから、女子生徒は接触の瞬間まで、スマホに夢中になっていた可能性が高い。

 ▼大事に至らなくてよかった。東京都内の私鉄では、3年前に死亡事故も起きている。携帯電話を操作していた男性が、警報機の鳴っている踏切内に入って、電車にはねられたのだ。

 ▼薪を背負って、本を読んで歩く金次郎の姿は、明治時代の小説の口絵から広まった。600以上の村の再建に携わった金次郎は、そのうち200以上の村に足を運んでいる。『おくのほそ道』によると、46歳の松尾芭蕉は1日50キロ以上も歩く日があった。江戸時代の日本人は健脚だった。金次郎も顔を上げ前を見据えて、颯爽と歩いていたに違いない。

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