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【産経抄】蓮実節再び 5月18日

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【産経抄】
蓮実節再び 5月18日

 「もっと新しい人、新しい作品に当てられるのがよいのではないか」。山本周五郎がこんな理由で、昭和18年の直木賞を辞退したエピソードは広く知られている。

 ▼実はそれに先立ち、15年の芥川賞にも辞退者がいた。『回想の芥川・直木賞』(永井龍男著)によると、現在の東大教養学部に当たる一高のドイツ語の教授、高木卓である。「素直に受けてくれないと、審査するものは迷惑である」。賞を創設した菊池寛は、当時の「文芸春秋」に憤懣(ふんまん)をぶちまけた。

 ▼三島由紀夫賞と山本周五郎賞は、芥川賞と直木賞の向こうを張って昭和63年に始まった。将来「回想の三島・山本賞」が編まれるとしたら、今回三島賞を受賞した蓮実重彦(はすみ・しげひこ)さんは、必ず取り上げられるだろう。「新鋭」という賞の規定に、80歳の蓮実さんはあてはまるのか、審査員の間で議論が交わされたはずだ。仏文学や映画評論の分野では、すでに第一人者の地位にある。

 ▼受賞当日の記者会見ものちのちまでの語り草になりそうだ。「全く喜んでおりません」「日本の文化にとって嘆かわしい。若い方がお取りになるべきです」。蓮実さんは終始、不機嫌だった。ではなぜ、辞退しなかったのだろう。

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