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【産経抄】秋山さんなら 4月14日

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【産経抄】
秋山さんなら 4月14日

 秋山ちえ子さんは、女性リポーターの草分けだった。どんな題材でも現場に足を踏み入れ、確かめずにはいられない。戦後まもなく、NHKラジオ「私の見たこと聞いたこと」を担当していたころのエピソードである。高知県でカツオ船に乗り込もうとして、断られた。「女一人は縁起が悪い」というのだ。

 ▼相乗りの相手を求めて、浜のおかみさんを説いて回ったが、誰も応じてくれない。秋山さんは雑貨屋で人形を買って、漁船に向かった。「これで女一人じゃないでしょう」。漁師は根負けするしかない。翌朝3時から夜の9時ごろまで、船酔いに苦しみながら取材を続けた。

 ▼TBS系ラジオ「秋山ちえ子の談話室」が始まったのは昭和32年である。40歳の秋山さんは、2男1女の子育ての最中だった。安保騒動では、デモに出かける高校生の次男についてゆき、涙を流しながら放送で訴えた。「同じ日本の若者、学生と機動隊を憎しみ合うように追いやったのはだれだ」。

 ▼戦前、ろうあ学校の教師を務めた経験もあって、福祉問題にも熱心に取り組んだ。政治の話題から、子育てや老後の生き方まで、一日も休まずリスナーに語り続けた。気がついたら45年、放送回数1万2512回の金字塔を打ち立てていた。

 ▼ラジオの仕事に区切りをつけてからも、評論活動を続けてきた。その秋山さんが、99歳で亡くなった。訃報が載った昨日の新聞は、千葉県で開園予定だった保育園が建設断念に追い込まれたニュースを伝えていた。

 ▼周辺住民の強い反対によるものだ。開園を楽しみにしていた人の落胆は大きいだろう。「子供の声で騒がしくなる」「仕事に復帰できない」。秋山さんなら両方の言い分に耳を傾けて、どんな裁定を下すだろう。

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