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【正論】富豪トランプ氏にみる大統領選の「歪み」 格差社会に強まる「不満」 青山学院大学特任教授・猪木武徳

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【正論】
富豪トランプ氏にみる大統領選の「歪み」 格差社会に強まる「不満」 青山学院大学特任教授・猪木武徳

猪木武徳氏 猪木武徳氏

 米国の大統領候補者選びの経過を見ていると、所得や資産の格差拡大への強い不満が米国社会に広がっていることがわかる。当初は泡沫(ほうまつ)候補とみられていたサンダース氏への根強い支持は、格差問題を抜きにしては説明がつかない。昨年冬に日本のメディアを賑(にぎ)わした「ピケティ現象」は、政治の世界にも強い影響を与えたのだ。

 ≪高収入は悪とする意識の広がり≫

 ピケティ氏の格差論をめぐっては現在も研究者の間で論争が続いている。ただ、社会良識から考えて、現今の格差是正の政策論には改めて問題とすべき点が多い。

 ひとつはピケティ氏の分析が「トップ1%の高所得者」に焦点が当てられ、高い所得や資産に課税し、いかに彼らの所得の低下を図るかが論じられている点だ。

 しかし重要な社会問題は、極端に低い所得に苦しむ貧困層の現状であって、高い所得を得ている者の所得自体を減じることを政策目標とすることは妥当ではない。

 もちろん貧困層への政策対応には財源が必要であるから、累進的な課税の問題を避けて通ることはできない。だが、高所得自体が望ましくないという形で課税の議論が進むと、高所得を得ることが倫理的に悪であるかのごとき錯覚を与えてしまう。実際、ピケティ氏は「資本からの収益には、企業家の労苦、純粋な運、そして公然たる窃盗の3つが分かちがたく絡まっている」と述べているのだ。

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