産経ニュース

【産経抄】「ときぐすり」の薬効が薄れていなければ、きっと今も…東日本大震災5年を迎えた3月11日

ニュース コラム

記事詳細

更新

【産経抄】
「ときぐすり」の薬効が薄れていなければ、きっと今も…東日本大震災5年を迎えた3月11日

 「五年前の家族の急死から立ち直りたい気持ちでまとめたものです」。東京都町田市に住む藤森重紀(しげき)さんから、手紙とともに詩集『ときぐすり』が送られてきたのは、東日本大震災から数日たったころだ。

 ▼都立高校教諭だった藤森さんの妻、由美子さんは、定年を迎える直前に帰らぬ人となった。子供はいない。「日めくりのような気遣いで 四囲のひとが わたしに処方してきた ときぐすり」(ときぐすり)。詩をコラムで紹介すると、少なからぬ反響があった。藤森さんは「ときぐすりは時日による『風化』を待望するものではけっしてない」ともいう。

 ▼大震災とも無関係ではいられなかった。岩手県一関市で暮らす高齢の両親が被災した。余震におびえながら病に倒れた父親は亡くなった。藤森さんは、認知症が進む母親を毎月見舞っている。

 ▼あれから5年。古希を迎えた藤森さんから、久しぶりの便りが届いた。『構図』と題した詩誌を一人で創刊したという。架空のバスの「運転士」が主人公の詩がある。津波が三陸海岸に押し寄せた翌日、避難所への送迎バスを担当した。

「ニュース」のランキング