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【直球&曲球】野口健 人は夢によって生かされている

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【直球&曲球】
野口健 人は夢によって生かされている

 30代後半に差し掛かったある夏、僕は家族や事務所スタッフに「僕には夢がある」と伝えた。「次はどこの山に登りたいの?」との質問に「僕の夢はカメラマンになること」と告げたら、「えっ!」と絶句された。彼らにはまるで進路に悩んでいる高校生のような発言に映ったようだ。しかし、僕は本気だった。10代半ばからひたすら山に登り続けていた。世代ごとに見えていた景色も変化していく。そして40代目前に「人生の折り返し地点」を感じ始めた。その時々で人はさまざまな夢を抱くものだが、最初に抱いた夢は特別なのかもしれない。

 僕の人生初の夢はカメラマンになることであった。小学生の頃「池中玄太80キロ」というドラマがはやっていた。西田敏行さん演じる玄太の熱い生きざまに僕はカッコいいと憧れていたのだ。カメラマンに憧れを抱き、中、高は写真部に所属。高校から登山を始め、新たな夢として7大陸最高峰登頂が加わった。「登山家」か「カメラマン」か。高校を卒業するまでに選択しなければと悩んだ。そして登山家への道を選んだ。それからは迷わず一直線に走り続けた。しかし、「人生の折り返し地点」で再びあのモヤモヤが湧き上がってきたのだ。この感覚、忘れていた。そうだ! 僕はカメラマンになりたかった。そして心が躍った。

 ヒマラヤやアフリカの山々、また、さまざまな活動の現場にレンズを向けた。テーマは明確であった。A面B面である。ヒマラヤや富士山にA面とB面があるように全ての世の中に両面が存在しているのだ。そして「生き死に」である。「死」を伝えることによって「生」を感じる。それらを写真の世界で伝えたいとシャッターを切り始めた。

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