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【鈍機翁のため息】375 間奏IV 海賊ドレークと聖ヤコブ

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【鈍機翁のため息】
375 間奏IV 海賊ドレークと聖ヤコブ

 9世紀初頭に発見され、サンティアゴ・デ・コンポステラのサンティアゴ教会に丁重に祭られていた聖ヤコブの遺骸が、長期間行方不明になったことがある。原因をつくったのは英国人として初めて世界一周を成し遂げたフランシス・ドレーク(1543頃~96年)である。

 奴隷貿易に従事していた若いころ、スペイン海軍の奇襲を受けて多くを失った彼は、スペインに復讐(ふくしゅう)することを生きがいとした。1588年のアルマダの海戦では、英国艦隊副司令官としてスペインの無敵艦隊を撃破した軍人だが、女王公認の海賊という顔も持っていた。彼はスペイン沿岸やスペインが支配するカリブ海域で略奪行為を繰り返していた。特に英国から目と鼻の先にあるスペイン北部沿岸の町にとっては悪魔のような存在だった。

 ヤコブの遺骸が眠るサンティアゴ・デ・コンポステラもドレークの襲撃を受ける可能性があった。そんなわけで、略奪を恐れたサンティアゴ教会の関係者は遺骸をひそかに別の場所に隠した。ところが、関係者が隠匿場所を漏らさず亡くなったのだろう、どこにあるか分からなくなってしまう。発掘調査によって再発見されたのは、300年後の1879年のことだった。

 ドレークは、パナマ沖に停泊中の船の中で赤痢のため人生を閉じる。遺体は鉛の棺に納められ海に沈められたという。トレジャーハンターがこの棺を探しているというが、こちらはいまだに見つかっていない。(桑原聡)

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