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【正論】中華の「ストーリー」に打ち勝て 筑波大学大学院教授・古田博司

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【正論】
中華の「ストーリー」に打ち勝て 筑波大学大学院教授・古田博司

 私はいつも庶民の「常識」をもって語りかけねばならないと考えている。歴史には実はストーリーなどないというのが、常識である。出来事の連鎖があるだけだ。ストーリーはインテリたちが後づけでひねり出すのである。

 ≪出来事の連鎖にすぎない≫

 「人間は原因から始めることはできない。必ず結果から遡(さかのぼ)らなければならない」というのはカントだが、今ここにある死体からわれわれは死の時を予想するのであり、いつ死ぬかは生きているうちはわからない。この死体は病死だとしよう。そこからタバコの害という原因をひねり出したいインテリは、肺がん、肺気腫、心筋梗塞などさまざまなストーリーを案出する。だが本当は「何年何月にここに死体があった」としか言えない。ゆえに、あるのは出来事であり、歴史はその連鎖にすぎない。

 歴史にストーリー性があると信じているのは、一部の国の人たちの個性によるのである。日本人はこれが強くて、同じく強い中国人やドイツ人から学んでしまったものだから、一層強化された。

 英米人などは信じない。E・H・カーという英歴史学者の本など、ただ事実の羅列が続くだけで、あくびが出るほど退屈だ。では何が彼の腕の見せどころかと言えば、どの歴史的事実をもってきて説明するかという、その史料選択の妥当性にあるのである。遺跡の発掘と復元の手腕に似ている。

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