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【産経抄】キョンキョンの書評 10月28日

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【産経抄】
キョンキョンの書評 10月28日

 平成23年に75歳で亡くなった内藤陳さんは「トリオ・ザ・パンチ」時代、一世を風靡(ふうび)したコメディアンである。一度だけインタビューする機会があった。

 ▼そのときの肩書は、書評家、いや、本人によれば、日本冒険小説協会会長にして、「面白本のお勧め屋」である。天井まで本が積み重なった自宅マンションで、バーボンを傾けながら、ハードボイルド・ミステリーの魅力を語ってやまなかった。

 ▼昨日の小紙「話の肖像画」を読んで、30年近く前の至福の時間がよみがえった。椎名誠さんの作家としての出発点となったのは、昭和51年に創刊した『本の雑誌』である。人気の理由は、「面白い本はどんどん褒める、つまらない本は思いっきり貶(けな)そう。タブーは一切なし」のモットーだった。

 ▼確かに椎名さんの指摘の通り、当時は似たような作りだった新聞の書評欄も、最近は小紙を含めて工夫を凝らしている。とりわけ、昨年まで10年間、読売新聞の読書委員をしていた女優の小泉今日子さんの書評には、いつも感服させられた。

 ▼「鉛筆だけの素描のように描かれた、ゆるいタッチのこの漫画を侮ることなかれ。私、最後には号泣してしまいました」。こんな軽妙な書き出しで、読者の興味をたちまち引きつける。時節、本の紹介の筆を執る小欄は、その芸の足元にも及ばない。刊行されたばかりの書評集には、小泉さんの恩師で作家の故久世光彦(くぜ・てるひこ)さんから届いた、ファクスが紹介されていた。「あなたの書評を読むと、その本が読みたくなるというところが、何よりすばらしい」。

 ▼今年も読書週間が始まった。出会ってよかったと思える本への道しるべとして、書評の役割はますます大きくなっている。小泉さん、ぜひ小紙にも書いてください。

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