産経ニュース

【産経抄】母と同じ屋根の下 10月27日

ニュース コラム

記事詳細

更新

【産経抄】
母と同じ屋根の下 10月27日

 「私は、母と同じ屋根の下で暮らした記憶をほとんど持っていない」。寺山修司は、自伝抄『消しゴム』に書いている。13歳のとき、九州・芦屋の米軍基地に出稼ぎに出る母を、青森駅で見送った。

 ▼2人で夜鳴きそばをすすっていると、美空ひばりの「悲しき口笛」が聞こえていた。♪いつかまた逢(あ)う指切りで 笑いながらに別れたが…「それが私と母の生きわかれの唄になった」という。

 ▼8歳の少年には、母と指切りする暇(いとま)も与えられなかった。平成7年9月、母は、目の前で警察に任意同行されて、帰らなかった。その2カ月前、大阪市東住吉区の自宅から火が出て、11歳の姉が亡くなったばかりである。

 ▼母は、自宅に放火して長女を焼死させたとして、内縁の夫とともに殺人の容疑などで逮捕された。裁判では、無期懲役が確定する。少年は、何が起きているのかわからないまま、母方の祖父母に引き取られた。

「ニュース」のランキング