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【産経抄】とにかく、めでたい 10月7日

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【産経抄】
とにかく、めでたい 10月7日

 5年半に及ぶTPP交渉は、ようやく大筋合意に達した。最後までもめたのが、医薬品の特許を保護する期間だった。ノーベル医学・生理学賞を受賞した、北里大学の大村智特別栄誉教授(80)の研究も、特許の話題なしでは語れない。

 ▼1973年、米国の大学に滞在していた大村さんは、帰国して北里研究所に戻るに当たり、製薬会社に共同研究を持ちかけた。研究資金の支援を受けた大村さんが、有用な化合物を見つける。製薬会社がその化合物を実用化し、売り上げに応じて、研究所が特許料を受け取るというものだ。

 ▼その成果の一つが、静岡県のゴルフ場に棲(す)む微生物から発見された、エバーメクチンだった。家畜の寄生虫退治に劇的な効果がある。「イベルメクチン」として商品化されると、世界的に大ヒットした。埼玉県にある北里大学の病院は、この特許料で建設されたものだ。

 ▼大村さん自身は、絵画のコレクターとしても知られる。故郷の山梨県韮崎市には、美術館を建てた。特許といえば、ノーベル賞の創設者であるノーベルは、ダイナマイトの発明で巨万の富を得た。しかし、それが戦争や暗殺に使われる事実に苦しんだ。

 ▼大村さんは幸い、そんな悩みとは無縁である。イベルメクチンは、人の病気にも効く。アフリカで風土病で苦しむ、何億もの人々を救ってきた。病気の撲滅まで、薬は無償提供されるという。

 ▼と、ここまで書いたところで、梶田隆章東京大教授(56)の物理学賞受賞のニュースが飛び込んできた。質量がゼロと考えられてきた、素粒子ニュートリノの質量の存在を確かめたという。大村さんのわかりやすい業績に比べて、梶田さんが解明しようとする宇宙の謎は、理解不能である。とにかく、めでたい。

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