産経ニュース

【正論】国家の存立縛る憲法学への疑問 京都大学名誉教授・佐伯啓思

ニュース コラム

記事詳細

更新

【正論】
国家の存立縛る憲法学への疑問 京都大学名誉教授・佐伯啓思

 にもかかわらず、憲法学者の大半が護憲派であり、しかもそのことが政治的影響力をもっている。いや、護憲派の憲法学者たち自ら、政治的影響力を行使しようとしている。しかもそれこそが立憲主義だという。現下でいえば、安倍政権下で進められてきた安保法制は憲法を超えた立法権の暴走であるから、それを憲法によって抑止しなければならない、と彼らは主張している。つまり、憲法という根本規範によって、ある政治的決定を覆すという政治的課題を遂行しようというのである。

 ≪憲法は無条件に優位に立たない≫

 通常は、これは立法府によって成立した法律をめぐる司法判断であり、違憲立法審査である。ところが、1959年の砂川判決をみてもわかるように、最高裁は、日米安保体制そのものは高度な政治的課題である、として、その司法的判断を避けた(統治行為論)。

 ここには重要な問題があって、国家の安全保障というような、国の存立の根底にかかわるような問題については、憲法(法規範)と政治とを整然と区別することは困難であり、無条件で憲法が優位に立つ、というわけではない、ということである。ある種の政治的課題について、憲法の立場からこれを縛ることがまた政治的行為になってしまうのである。

 朝日新聞が憲法学者209人にアンケートをおこなっている。その結果が朝日のデジタル版(7月11日)に掲載されているが、回答した122人のうち、安保関連法案が憲法違反だとする者は104人、違反にはあたらないとする者は2人だという。圧倒的多数の憲法学者が集団的自衛権を憲法違反とみなし、安保法案に反対だという。護憲派はこれをもって安保法案反対の重要な根拠としてきた。

「ニュース」のランキング