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【正論】国家の存立縛る憲法学への疑問 京都大学名誉教授・佐伯啓思

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【正論】
国家の存立縛る憲法学への疑問 京都大学名誉教授・佐伯啓思

 私は憲法学についてまったくの門外漢であるが、以前からよくわからないことがあった。それはどうして大方の憲法学者が護憲を唱えるのか、という疑問である。憲法学の一つの仕事は条文解釈である。それは現行憲法を前提として、条文間の整合性や現実への適合性を保つというものであろう。

 しかしもう一つの仕事は憲法とは何かという法哲学的考察、憲法成立に関わる歴史的考察、さらには他国との比較憲法的視野から日本国憲法の意義や特殊性、問題点を炙(あぶ)りだすことである。つまり無条件で現憲法を前提とするのではなく、その問題を提示することも憲法学の仕事ではないかと思う。

 ≪政治的影響力を行使する護憲派≫

 しかも、常識的に考えれば、敗戦後の占領下にあり、間接統治とはいえ、事実上、主権を奪われた下で、連合国軍総司令部(GHQ)がきわめて短期間に作成した憲法である。とても万全の法典と想定することはできまい。とすれば、現憲法のもつ問題を指摘することもまた、憲法学の大事な仕事であるように私には思われる。

 さらに条文の整合的解釈をめざす解釈憲法学を中心にする憲法学の立場からしても、護憲・改憲の価値判断は直接的にでてくるものではないであろう。憲法を前提とした条文の法理的解釈からどうして護憲というような価値判断がでてくるのであろうか。憲法を前提とした解釈論には、憲法そのものを相対化する視点はないだろう。

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