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【産経抄】ふたつの独立問題 5月11日

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【産経抄】
ふたつの独立問題 5月11日

 今から振り返れば、1997年は、英国が大きな転機を迎えた年だった。ダイアナ元皇太子妃が交通事故で亡くなったのは、8月31日である。その衝撃的な死が王室の危機を招き、エリザベス女王がいかに乗り切ったか、先週のコラムに書いた。

 ▼事故の10日余り後、スコットランドの首都エディンバラでは、名物バグパイプの音が鳴り響いていた。なにしろ、300年ぶりに独自の議会を取り戻すことになったのだ。スコットランドの自治権拡大を公約のひとつにして、政権を奪取したばかりの労働党が、住民投票を後押ししていた。

 ▼昨年9月に行われた、英国からの「独立」を問う住民投票では、反対が多数を占めた。しかし、今回の総選挙では、独立を掲げるスコットランド民族党(SNP)が、この地域の議席をほぼ独占した。

 ▼あおりを受けたのが、もともとスコットランドを牙城にしてきた労働党である。これが与党・保守党の単独過半数獲得という、予想外の結果に結びついたとすれば、歴史の皮肉といえる。

 ▼もっとも、キャメロン首相に、勝利の美酒に酔う余裕はないはずだ。2017年末までに欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票を実施する。保守党はこんな選挙公約を掲げた。党内の対EU強硬論が今後勢いを増せば、欧州のみならず世界を震撼(しんかん)させる事態も招きかねない。第三党に躍進したSNPは当然、中央政界のゆさぶりを強めてくる。ふたつのやっかいな「独立問題」を果たして乗り切れるだろうか。

 ▼スコットランドの将来について、英国統合の象徴であるエリザベス女王は、もちろん深い関心を寄せている。スコットランドの大学で学び、妃(きさき)と出会った、ウィリアム王子の存在がますます大きくなりそうだ。

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