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【正論】
雄偉な神武天皇像に国柄しのぶ 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司
≪生々しい迫力と存在感≫
過日、東京の地下鉄のホームを歩いていたら、1枚のポスターに注意をひかれた。そのポスターの下半分には、木彫と思われる人物像の上半身を少し横から撮った写真が印刷されていた。刀を差し弓矢の束を背負った古代の武人を思わせるこの人物は、圧倒的な存在感を持っていた。この彫刻は、一体何か。それが発する磁力に引き寄せられるように近づいてみると「神武天皇立像」とあった。
平成27年の4月のある日、21世紀の東京という最先端の都市の一角に、突然、神武天皇が出現したようであった。それほどに、この神武天皇の像は、生々しい迫力に満ちていた。
ポスターには「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」と書かれていた。この4月初旬から、上野の東京藝術大学美術館で開催されている展覧会で、ボストン美術館と東京藝術大学美術館のふたつのコレクションを合わせるダブル・インパクトによって、近代日本美術における日本と西洋との影響関係を再検討するという意図で企画されたものであった。開国から日露戦争くらいまでの日本の美術作品が展示されている。近来、思想史的な観点からではあるが、同じく「明治ニッポン」に深い関心を抱いていることもあり、早速上野に出かけた。
