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【産経抄】種まき桜 3月25日

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【産経抄】
種まき桜 3月25日

 花見を楽しんでいるのだろうか。「あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ をみなごしめやかに語らひあゆみ…」。詩人の三好達治が、大正15年に発表した「甃(いし)のうへ」の一節である。静かに語らいあいながら歩く少女たちの頭上に、桜の花びらが舞い落ちている。

 ▼福島県川内村でも桜の季節になると、秋元千果さん(12)と友達による同じような光景が見られるはずだった。もっとも東京電力福島第1原発事故から4年たった今月23日、村で唯一の小学校で卒業式を迎えたのは、千果さんただ一人である。

 ▼事故の後、郡山市内で暮らしていた千果さんと家族は3年前、学校再開とともに村への帰還を果たした。しかし、学校に戻ってきた児童は全校でも16人にすぎず、18人いた千果さんの同級生は今も避難先にとどまっている。千果さんと担任の先生は、ずっと教室で1対1の授業を続けてきた。寂しさが募って、泣きたい日もあったはずだ。それでも、卒業文集の作文には、「今は充実しています。川内村に戻ってきたことに少しも悔いはありません」と記していた。

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