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【日曜に書く】「21世紀の資本」 論説委員・福島敏雄

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【日曜に書く】
「21世紀の資本」 論説委員・福島敏雄

カギは「r>g」

 ここから世界中の経済学者たちの論議を集めた独特な分析が展開される。カギは、

 「r>g」

 という不等式である。「r」は資本収益率、「g」は国民所得の成長率を指す。不等式で結ばれているように、資本による儲(もう)けの方が、労働などによる所得よりも収益率が高い。

 これを裏づけるために、過去300年にわたるフランスや英国、米国、日本など先進諸国の膨大なデータを緻密に分析。ざくっと言えば、資本収益率は世界大戦期を除けば5%前後、所得成長率は1~2%前後で、それぞれ伸びている。

 日本で言えば、1960年代から70年代の高度経済成長期において、所得成長率も急速に伸び、「一億総中流化社会」などと呼ばれた。だがこれは例外であって、バブル崩壊を受けた90年代以降、資本と所得の収益率は開き続けた。

 結論としては、資本主義は放置しておけば、貧富の格差がどんどん拡大することを宿命づけられたシステムであり、なぜかと言えば、データがそうなっているからだ、となる。書名が『21世紀の資本論』ではないように、理論書というよりも分析書に近い。

 だがどうにも、疑問符がしつこく追いかけてくる。とりわけ資本収益率が伸びた理由の中に、マルクス流に言えば、「収奪」による収益が考慮されていない点が引っかかる。

世界的な資本税の導入

 労働者の報酬について、ピケティ氏は留保をつけながらも、「限界生産力」という概念を紹介している。教育や技能訓練などによって、より高い労働能力を持つ労働者が、より高い賃金を得る。だが賃金には限界値、つまり閾値(いきち)がある。

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