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【日曜に書く】「21世紀の資本」 論説委員・福島敏雄

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【日曜に書く】
「21世紀の資本」 論説委員・福島敏雄

「資本」とは何か

 「19世紀の資本」を論じたカール・マルクスの主著『資本論』第1巻は「資本の生産過程」を論じ、「資本主義的所有は、自己の労働にもとづく私有の破壊、すなわち、労働者の収奪を条件としている」という文章で結ばれている。

 欧米を中心に世界的なベストセラーとなり、昨年12月、ようやく邦訳本が出たフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の大著『21世紀の資本』は、マルクスとは別の角度から資本主義の根本矛盾を説いた書である。

 もっともピケティ氏はマルクスには批判的で、インタビューでは「(マルクスは)一度もちゃんと読んだことはないです。(略)『資本論』は難しすぎて読みづらい」(「現代思想」臨時増刊号)と語っている。

 たしかにピケティ氏のマルクス解釈には、いくつかの点で疑問符がつく。決定的なのは、基本的な概念である「資本」の定義である。

 マルクスの「資本」は、さまざまな利潤を追求するダイナミックな運動体と位置づけられている。その利潤の代表的なものは、「労働者の収奪」によって生み出された剰余価値である。

 ピケティ氏の「資本」は、まったく異なる。土地などの不動産のほか、建物、機械、企業、株、債権、特許、天然資源など、利子や利潤を生み出すものすべてを「資本」と定義した。公的な資本も含まれているから「富」、あるいは「国富」にちかい。

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