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【主張】仏紙銃撃テロ 表現の自由は揺るがない

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【主張】
仏紙銃撃テロ 表現の自由は揺るがない

 いかなる理由であれ、表現や言論の自由を暴力で踏みにじる卑劣な行為は断じて許されない。

 イスラム教の預言者ムハンマドを登場させた風刺画などを掲載したフランス週刊紙シャルリー・エブドのパリの本社が襲撃され、編集長ら12人が殺害された。

 捜査当局によると、犯人らはフランス生まれのイスラム教徒とみられる。国際テロ組織アルカーイダや「イスラム国」の過激思想に共鳴していたようだ。

 オランド大統領は「フランスの報道の歴史で最も暗い日だ」と残忍な犯行を非難した。国民の間には「私たちは皆、シャルリーだ」と連帯の声が広がっている。犠牲者に深い哀悼の意を表したい。

 欧州では2005年、デンマーク紙がムハンマドの風刺画を掲載し、イスラム世界が激しく反発して、宗教に絡む表現の自由が問題となった。

 シャルリー・エブド紙はその風刺画を転載し、その後もムハンマドを何度か題材に取り上げ、編集長はアルカーイダから殺害の標的の一人に挙げられていた。

 犯人らは現場で「ムハンマドの敵を取った」と叫んだという。

 偶像崇拝を排するイスラム教では、預言者ムハンマドを絵に描いたり、笑いの対象にしたりすることは禁忌である。同紙はキリスト教、ユダヤ教や政治家たちも含め幅広いテーマを扱ってきた。

 信教に関わる問題では、侮辱的な挑発を避ける賢明さも必要だろう。だが、漫画を含めた風刺は、欧州が培ってきた表現の自由の重要な分野である。

 テロの恐怖に屈し、自己規制してしまってはテロリストの思うつぼだ。

 昨年は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記暗殺計画を描いた、ソニー米映画子会社制作のコメディー映画がテロ予告を受け、米国での公開がいったん中止に追い込まれた。

 イランの死刑宣告を受けた英作家の著作「悪魔の詩」を翻訳した筑波大助教授が、1991年に構内で殺害された事件は、未解決のままだ。日本も表現の自由に対するテロの脅威と無縁ではない、という認識を新たにしたい。

 フランスをはじめ欧州には多くのイスラム教徒移民が暮らす。過激思想に染まった、そのごく一部への反感がイスラム教徒全体の排斥につながらないような、寛容な社会であり続けてほしい。

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