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【産経抄】貝と羊 1月1日

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【産経抄】
貝と羊 1月1日

 「土用の丑の日」にウナギを食べる習慣をつくったといわれる平賀源内は、江戸時代のマルチタレント(多才人間)だった。「エレキテル」を復元し、鉱山を開発し、浄瑠璃作品を残した。失敗に終わったものの、今年の干支(えと)である羊を放牧して、日本初の毛織物作りにも挑戦している。

 ▼羊は紀元前8千年頃には、既に家畜化が始まっていた。キリスト教では、人間は「迷える子羊」と捉えられている。イスラム教、ユダヤ教にとっても大切な動物である。その羊が、日本国内で本格的に飼育されるようになったのは、明治時代になってからだ。

 ▼それまでの日本人にとって、干支のなかの未(羊)は、辰(竜)と同様に想像上の動物でしかなかった。今や日本は、世界有数の羊毛の消費国である。最近では低カロリー、高タンパクの食材として人気を呼んでいる。

 ▼羊は今年、別の意味でも注目されそうだ。中国文学研究者の加藤徹さんによると、中国はもともと、東西の異質な種族の衝突から生まれた。豊かな東方の種族は財貨を重んじたため、加藤さんはその気質を、当時貨幣として使われていた「貝の文化」と呼ぶ。一方、遊牧民族と縁の深い西方の種族は、イデオロギー的な神を重んじる「羊の文化」である。

 ▼現代の中国も2つの文化を受け継いでいる。すなわち「政府の愛国教育は『羊』」「日本との経済関係は維持したいというホンネは『貝』」である(『貝と羊の中国人』新潮新書)。

 ▼抗日戦争70年の今年、中国政府は日本に対して「歴史戦」を猛烈に仕掛けてくるだろう。その一方で、中国人観光客は相変わらず日本で土産物を買いあさっていくのかもしれない。いかに「貝と羊」に向き合うか、今年も最大の課題である。

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