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【正論】憲法改正へ積極的議論の時だ 日本大学教授・百地章

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【正論】
憲法改正へ積極的議論の時だ 日本大学教授・百地章

 ≪精神的レジームから脱却へ≫

 先の総選挙は自民党が圧勝して終わった。昨年末に安倍晋三首相が靖国神社を参拝してから間もなく1年になるが、安倍政権が国民の信任と圧倒的支持を得たことの意味は極めて大きいと思われる。

 安倍首相は、かねて「戦後レジームからの脱却」を主張してきた。「戦後レジーム」とは、制度的には憲法を中心とする戦後体制そのものであり、精神的には東京裁判に起因する「自虐史観」や精神的自立性の喪失ということになろう。

 首相の靖国神社参拝は、「精神的戦後レジーム」から脱却するための力強い第一歩となった。当初、中韓両国から激しい批判があり、米国まで「失望」を表明したため、日本が孤立化するのではと危惧する向きもあった。しかし首相の地球儀を俯瞰(ふかん)する精力的な外交によって誤解は解消され、逆に今では日本を非難し続ける中国や韓国の方が国際社会から厳しい目を向けられているではないか。

 先の大戦が終結してから、来年は70年という節目の年に当たる。中国は再び虚構の「南京事件」を持ち出して日本批判を始めたが、これに対抗するためにも、積極的に反論していく必要があろう。

 そして、精神的戦後レジームからの完全な脱却を図るためにも「強い日本」を作り上げることが不可欠である。懸案の日中首脳会談が終わった今、安倍首相には新内閣成立後、ぜひもう一度、靖国神社参拝を行っていただきたい。

 ≪第3次安倍内閣に期待≫

 「戦後レジーム」の本丸はもちろん憲法改正である。選挙後の記者会見において安倍首相は「憲法改正は自民党の悲願であり、立党以来の目標である」と明言したが、心強い限りである。

 首相は憲法改正が「私の歴史的使命」と公言しており、憲法制定後60年も放置されてきた憲法改正国民投票法を成立させたのは、第1次安倍内閣であった。そして先の第2次安倍内閣では、4年後に投票年齢を18歳以上に引き下げる国民投票法の改正を行っている。

 となれば、次の第3次安倍内閣において、本丸の憲法改正実現を目指すであろうことは疑いない。総選挙での圧勝により、首相の党内基盤は強化され、来年の総裁選挙で再選されることは間違いなかろうし、憲法改正に必要な時間も与えられた。残るは、憲法改正に向けた周到な戦略と今後のスケジュールであろう。

 憲法改正の実現のためには、さまざまな困難が待ち受けており、これを克服していくためには国民の高い支持率は不可欠である。それゆえ、当面はアベノミクスを成功させることによって日本経済を活性化させ、国民を元気づけることが緊要である。

 しかし、自民公明の両党で改憲の発議に必要な3分の2の改憲勢力が維持できた以上、より積極的に憲法改正の必要性を国民に訴えていく必要があろう。首相からのさらなる発信を期待したい。

 この点、自公連立合意で「憲法改正に向け国民的議論を深める」ことが謳(うた)われたのは画期的だ。

 ≪緊急事態条項なら発議可能か≫

 改憲のテーマとしては、占領下においてGHQ(連合国軍総司令部)から強いられた憲法制定の事情から、前文、天皇、第9条2項といった具合に、憲法全体について国民に幅広く改正の必要性を訴えていく必要がある。他方、衆参両院で3分の2の改憲勢力を結集するためには、改憲のテーマもおのずから絞られてこよう。

 その絞り込み方については以前、指摘したとおり、第1に国家的に重要な課題であること、第2に国家、国民にとって緊急の必要性があること、第3が国民にとって分かりやすく、多数の支持が得られそうなものであることだ。

 このように考えれば、真っ先に考えられるのがいつ発生するか分からない首都直下型地震などの非常時に備えて、憲法に緊急事態条項を定めることであろう。

 緊急事態条項の意義については本欄(9月25日付)で述べたとおりだが、11月6日に開催された衆院憲法審査会では、共産党を除く与野党7党が大規模災害や感染症拡大などの緊急事態に対処するための規定を憲法に盛り込む必要性に言及しており、改憲の優先テーマに浮上する可能性が強まったという(本紙11月7日付)。

 これには「加憲」の立場を取る公明党も賛成しており、来年の通常国会では具体的な憲法改正原案作りに向けて、積極的な議論が交わされることを期待したい。

 他方、国民投票で過半数を得るためには国民の理解と支持が不可欠だが、憲法改正問題に対する一般の関心はそれほど高いとはいえない。そこで必要なのが国民投票に向けた啓発運動だが、既に大阪府議会を含む24の府県議会で憲法改正促進の議会決議がなされ、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(共同代表・櫻井よしこ氏、田久保忠衛氏、三好達氏)が1千万人署名運動を始めた。

 2年後の憲法改正実現に向け、民間レベルでも力強い歩みが始まっていることは間違いなかろう。(ももち あきら)

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