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【産経抄】和紙の明かり 10月30日

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【産経抄】
和紙の明かり 10月30日

 照明デザイナーの石井幹子さんが、友人のフランス人工業デザイナーを鎌倉の自宅に泊めたときのことだ。「なんて美しい光だ」。六畳間で寝ていた友人は、障子越しに入ってくる朝の光への感動を語ってやまなかった。

 ▼別のフランス人の友人の口からいきなり、『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』という言葉が出て驚いたことがある。谷崎潤一郎が、日本文化は陰影にこそ美を見いだすと論じた、名著である。その翻訳書が照明デザインの教科書になっているというのだ(『新・陰翳礼讃』祥伝社)。

 ▼「光線を撥(は)ね返すやうな趣」の西洋の紙に対して、「柔らかい初雪の面のやうに、ふつくらと光線を吸ひ取る」。谷崎によってこのように肌合いをたたえられた和紙とその手漉(す)き技術が、ユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなった。

 ▼既に石州半紙(島根県浜田市)については、5年前から単独で無形文化遺産となっていた。今回、「細川紙」(埼玉県小川町・東秩父村)、「本美濃紙」(岐阜県美濃市)を加えた3紙の伝統的な技術が、改めて登録されることになる。

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