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【産経抄】ペンを手に戦う 10月12日

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【産経抄】
ペンを手に戦う 10月12日

 「この世はすばらしい。戦う価値がある」。こう言い放ったのはアーネスト・ヘミングウェーだった。自ら戦地に赴き、命を的に数多の名作を世に出した。いわば硬骨の作家も、最期は銃弾に伏している。自殺とも愛用銃の暴発ともいわれるが、一発の銃声に筆を折られた史実は消えない。

 ▼世は往々にして、「剣」の無慈悲に「ペン」の理性が挑む図式で成り立っている。女性が普通に教育を受けられ、笑える世の中に-。「本とペン」を願った15歳の少女が、下校途中に襲われたのは2年前の10月。イスラム武装勢力の一派から凶弾を頭に受けた。

 ▼死線をくぐり抜けた少女のその後に説明は要るまい。彼女が胸に宿すペンは折れるどころか芯を太くした。「1冊の本、1本のペンが世界を変えられる」と、昨年7月の国連演説が記憶に新しい。パキスタンのマララ・ユスフザイさんがノーベル平和賞を受賞した。

 ▼史上最年少への授与を「若すぎる」と危ぶむ声もあった。17歳、長い前途が待つ身だ。道理の通じぬ徒輩の恨みも買うだろう。会見では「終わりではなく始まり」と弁舌さわやかだったが、「最良の模範」という看板が一本道の人生を強いるくびきとならないよう願う。

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