【主張】政府のコロナ対応 首相は戦いの前面に立て 「GoTo」は一時停止を - 産経ニュース

【主張】政府のコロナ対応 首相は戦いの前面に立て 「GoTo」は一時停止を

 新型コロナウイルスの新規感染者数が全国で拡大している。東京都では1日、過去最多の472人を数えた。
 国民の不安は大きい。政府や自治体は対応に全力をあげていると信じたいが、どうにもちぐはぐな印象が強い。危機に際して望まれるのは、トップのリーダーシップである。
 残念ながら、緊急事態宣言の解除後、安倍晋三首相の存在が希薄に映る。感染拡大の防止と経済の回復という難しいかじ取りに国民の理解を求めるには、もっと首相が前面に立つべきだ。
 国民の信頼なくしてコロナに打ち勝つことはできない。安倍首相は適宜、自分の言葉で国民に語りかけるべきである。
 ≪国会で特措法改正急げ≫
 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は東京都や大阪府など大都市の現状を「重症者が徐々に増加してくる。医療提供体制への負荷が蓄積しつつある」と定義した感染漸増段階にあるとの認識を示した。
 その上で次の「急増段階」になってからでは遅いとし、「予兆を見つけたら今よりも強い対策を打ってもらいたい」と訴えた。
 ただし、その予兆を検知する指標の作成は次回会合以降に先送りされた。事態は刻々と変化している。のんきに過ぎないか。
 感染の拡大を受けて安倍首相は「高い緊張感をもって注視している。陽性者の早期発見、重症化の予防が極めて重要だ」と述べた。その認識は正しい。
 早期発見には、検査の拡充しかない。それは経済活動の再開のためにも必要である。
 だが、実態は掛け声に追いつかず、検査態勢は諸外国に比して脆弱(ぜいじゃく)なままといえる。しかも検査の拡充は感染者の「宿泊施設での療養」とセットで進める必要があるが、実態は多くの陽性者が自宅療養にとどまっている。
 東京都医師会の尾崎治夫会長は7月30日の会見で「コロナウイルスに夏休みはない」と述べた。言葉は「一刻も早く国会を開いて国ができることを示し国民を安心させてほしい」と続く。閉会中の国会に対する注文である。
 国会はもっと働くべきだ。
 急務は、法的拘束力を伴う休業要請と補償を可能とする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正のはずである。
 ところがどうしたことか、政府は感染収束後に検証し、改正内容を固める方針なのだという。菅義偉官房長官は1日、読売テレビの番組に出演し、特措法の改正は「簡単にはできない。時間は多くかかる」と述べた。
 それでは泥棒を捕らえて縄をなうどころか、逃した後に次の泥棒に備えて縄をなうがごときの遅さだ。今ここにある危機に対応できなくて国会は役目を果たせるのか。臨時国会を召集して、特措法の改正を急ぐべきである。
 ≪今は旅行を楽しめない≫
 感染は全国規模で拡大している。感染者0が続いていた岩手県でも陽性者が出た。拡散させたのは人の移動である。
 沖縄県や岐阜県は独自に緊急事態、非常事態を宣言した。県外からの来訪に慎重な判断を求め、首里城や沖縄美ら海水族館は休業、休館を決めた。
 一方で政府は観光需要の喚起策「Go To トラベル」の事業を継続している。地方が「来てくれるな」と拒んでいるのに、国は推奨している。国民には極めて分かりにくく、「地方自治体としっかりと連携を取り、必要な対応を講じていく」と述べた安倍首相の言葉にも疑問符がつく。
 全国の都市圏で感染者が急増している現状では、東京都の出入りのみを対象から除外した現行の措置も根拠を失っている。
 同様の飲食業の支援策「Go To イート」をめぐっては、江藤拓農林水産相が最速で8月下旬とされた開始時期が遅れる可能性に言及している。
 朝令暮改の批判を恐れるべきではない。事態の変化に機動的に即応することこそ重要だ。
 「Go To トラベル」は一時停止すべきである。招かれざる客では旅を心から楽しむこともできまい。まず、感染拡大の収束こそが眼前の課題である。
 キャンペーンに促された旅行者が医療態勢が十分ではない地方にクラスター(感染者集団)を発生させれば、これは悲劇である。