カネかければ元通り復興するわけではない 相次ぐ災害…防災政策の議論先導を ブロガー・投資家・山本一郎

新聞に喝!
山本一郎氏

 酷暑が続いたこの夏の終わりに、西日本を襲った大型の台風21号と北海道の大地震という災害に相次いで見舞われました。亡くなる方もあり、多くの被災者が不便な暮らしを余儀なくされています。犠牲者の皆様には心から魂の平安があらんことをお祈りすると共に、被災された方々にはお見舞いを申し上げます。

 わが国は地勢上、災害の発生は避け得るものではなく、東日本大震災以降は特に叫ばれてきた災害対策、それも事前の対策と事後の対応両方において準備と心がけが必要であることは言うまでもありません。産経新聞でも「コンビニ、停電続くも店頭販売、一部では米飯の供給も」(「産経ニュース」7日)など被災地の状況を克明に報じていますが、とりわけ北海道で発生した大規模な停電については、泊原発が再稼働に向けた安全審査で停止中であったことも含め、電力供給体制に関してこれから公論として真剣に考えていくべき状況に入ったとも言えます。今回の台風にあっても、関西国際空港では浸水被害のほか連絡橋にタンカーが衝突し、千人単位で空港に取り残される人々が出るなどの問題が浮き彫りになりました。起き得る災害への対策は、その内容とかけられるコストの兼ね合い、また原発再稼働の是非など政治的な課題が絡み合います。政策レベルで見落としや対策のエアポケットがあると、災害がたちまち人災を呼び起こす事実は、福島第1原発事故の教訓をいま一度噛(か)み締めるべきだという議論にもなりましょう。

 とりわけ、泊原発の再稼働がなされていれば北海道での大規模な停電はかなり食い止められたのではないかという議論と併せて考えるべきは、関西の台風被害も北海道の地震も、東日本大震災のときと同様に「被災した地方が高齢化や産業の不在などで疲弊して、復興もままならない状態」に陥るのが必至なことです。熊本地震においても、高齢化が進んでいる地域ほど立ち直りに時間がかかっています。災害を乗り越えて、どのような日本を構想し、思い描いていくのかというグランドデザインが求められている状況で、政治にかかる期待も負担も非常に大きくなっているのは間違いありません。カネをかければ元通り復興するというわけでもないのです。

 かたや、政界では自民党総裁選が20日に予定され、いまのところ安倍晋三首相の3選が有力視される状況で、今後は災害対策や復興予算の捻出などなかなか困難なかじ取りを任されることとなります。30日には沖縄では知事選の投開票もあり、国内政治は落ち着く暇もなく対応に迫られる日々が続きそうですが、長期的視点に立った冗長性や即応性、コスト感覚そして機能面とバランスの取れた政策議論をメディアとして先導する必要があるでしょう。

【プロフィル】山本一郎 やまもと・いちろう 昭和48年、東京都出身。慶応大卒。専門は投資システム構築や社会調査。